笑う相続人
「笑う相続人」とは、被相続人と一度も会ったことがなく名前すら知らない人が相続人となり、棚からぼた餅で遺産が転がり込んできて高笑いをしているという意味の言葉です。
本来なら、家族の不幸を前に悲しんでいるはずなのに、高笑いをしていることへの批判の意味も込められています。
そもそも、この「笑う相続人」という言葉の出所は、ドイツであるとされています。
ドイツの昔の相続制度では、相続人となる人の範囲が広く設定されており、この相続制度への風刺の意味で、「笑っている相続人」という言葉が当時使われていたようです。
これが海を渡り、少し名前を変えて日本の相続の分野の言葉として登場したわけなのです。
かって、日本でも「笑う相続人」が登場する余地が大いにありました。
昭和37年に民法の改正があり、兄弟姉妹の再代襲、再々代襲を認めたことにより相続人の範囲が著しく広がったのです。
具体例でいうと、被相続人の兄弟姉妹の子孫が相続人となる余地が開けたわけなのです。
しかし、これでは、相続関係が複雑になり、「笑う相続人」が登場してしまうとの批判が各方面から出されました。(遠戚の者同士では、一度も会ったことすらないことが多いのです。)
そうした批判を受けて、昭和55年の民法の改正で、相続人となる者の範囲は甥姪までとされ、それらの子孫が相続人となる道は閉ざされたのです。
ただ、現在でも「笑う相続人」が登場することはあり得ます。
たとえば、こういうケースです。
夫が亡くなり、残された妻に子がいないケースです。
夫に兄がいたとします。この兄に前婚の妻との間に子がいました。(兄はすでに死亡し、子は前妻が引き取りまlした。)
このような場合、残された妻は、葬儀の後に相続人となる義理の兄の子の存在を突然知ることになるのです。
(妻は、夫や夫の親族からは、何も知らされていなかったのです。)
このような何の面識もない者同士で遺産分割協議をすることは困難です。
相続手続きは暗礁に乗り上げてしまいます。
そうならないためには、相続の問題や親族関係について日頃から関心を持ち、予め必要な情報を得ておき、例えば遺言をしておくことにより対策を立ててtおくことが有用となるのです。