相続放棄と遺贈

今回のテーマは、「相続放棄と遺贈」です。

具体的な設定は、次のとおりです。

『借金などの相続債務がある場合、相続人が相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。つまり、借金等の債務を引き継ぐこともないのです。        さて、そこでです。                                もし、亡くなった被相続人が、「遺言」をしていたらどうなるでしょうか。

特定の不動産(例えば自宅の土地)を、相続放棄をした人(甲さん)に遺贈するとの内容の遺言です。
ここでの問題は、相続放棄をしたことによって、借金などの債務をすべて免れたにもかかわらず、遺言により特定の不動産などを甲さんが取得することが出来るのかということです。』

みなさんは、この問題についてどのように思いますか。

個人的には、相続放棄をしたのに財産だけは取得するというのは公平ではないように思います。

それでは、実際のところは、どうなのでしょうか。

明確な裁判例があるわけではないのですが、相続放棄をした人が、特定の財産を遺贈として受けることを防ぐことは原則として出来ないものと思われます。

ただし、すべての場合にそうなるのではなく、一定の例外はあり得ます。

 

民法は、債務者が債権者を害する行為をしたとき、その行為を取り消す権利を認めています。(民424)

遺言者が、相続債権者を侵害するような「遺言」をした場合、債権者がその「遺言」を取り消す途は残されているのです。

ただし、この取消しは、裁判上で主張しなくてはなりません。

また、遺言がなされた時期、遺言をしたときの遺言者の財産等の状況によって取消の可否が異なります。


話を初めに戻して、そもそもなぜこのような結論になるのでしょうか。

それは、民法自体が、「相続放棄」と「遺贈」とを別個の制度として規定しているからなのです。

別の言い方をすると、「相続放棄をした者は、遺贈を受けることが出来ない。」との明文の規定が存在していないからなのです。


「相続放棄」と「遺贈」との関係をどのように規定するかは、実は相続法の根幹にも関わる大きな問題でもあるのです。

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