高齢者の遺言能力

福祉施設や病院に入っている高齢者の方が遺言をすることも少なくありません。
こうした場合、判断能力の低下により、遺言の有効性について争いになることがあります。

今回は、このような高齢者の遺言能力を巡る問題について考えてみたいと思います。

「遺言」は、遺言者の最終意思のあらわれであるから最大限尊重すべきと言われています。

また、民法も15歳に達したら遺言をすることができると定めています。(民961)

こうしたことから、一般の法律行為(例えば、物を売ったり買ったりする)の場合よりも遺言能力は、低いレベルでも構わないという考え方があります。
一連の遺言を巡るトラブルの背景には、このような考え方があるようにも思われます。

しかし、高額な不動産の処分を遺言によりするケースを考えてみてください。

日常の生活で要求される場合よりも、高いレベルの判断能力が必要なのではないでしょうか。

そこで、「遺言する内容の複雑さや財産の多さなどに応じて、つまり具体的な事例ごとに遺言能力のありなしを判断していくべき。」という考え方が出てきます。

こちらの方が説得力があると私は思います。

民法が制定されたのは、「60歳を超えれば長生きをした。」と言われた時代です。

今日の超高齢化時代の問題などは全く想定をしていません。

こうした時代背景も考えるべきではないでしょうか。

 

また、いくら本人の意思の尊重と言っても、高齢者の方が判断能力の低下した状態で遺言をすることがはたして公正な相続といえるのでしょうか。

なぜなら、通常の判断能力があればしなかったであろう遺言を認めることにもなってしまうからです。

 

以上、高齢者の遺言能力について書いてきました。

 

最後に、これから超高齢化社会を迎えて、遺言の果たす役割はますます大きくなるように思います。

しかし、遺言の有効性についてのトラブルもそれに応じて生じてくることも予想されます。

 

せっかく遺言をしても、その遺言が後から無効とならないように慎重に対応するべきと考えます。

 

できれば、元気なとき、熟年世代のうちに遺言をしておくといった早めの対応をすることが大切であると思います。

 

 

 

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