「妻に相続させる遺言」しかし・・・

今回問題にするのは、次のような事例です。

Aさんは、亡くなった先妻Cさんとの間に子供が2人いました。 
その後、AさんはBさんと再婚をしました。
Aさんは、Bさんのことを心配し相続人の間で争いが起こらないように公正証書遺言を行いました。
公正証書遺言の内容は、妻であるBさんに「自宅の土地と家屋を相続させる」との内容です。

しかし、ささいなことがきっかけでAさんとBさんは不仲になり、ついに離婚することになりました。

この場合、先ほどの遺言の効力はどうなるのでしょうか。

離婚によりBさんはAさんの相続人となることはなくなります。
したがって、「相続させる」ということはありえなくなります。

それでは、Bさんはこの遺言によって財産を取得することは一切できないのでしょうか。

ここで、「遺贈」を原因としてBさんが財産を取得することができるとする余地があります。

しかし、ほんとうに「遺贈」を原因として財産を取得できるのでしょうか。

そもそも遺言は遺言者の最終意思であり、それだからこそ尊重されるのです。

離婚後もAさんの最終意思に変更がないとすることはできないのではないか。
このように考える方も多いと思います。
民法の規定も、「遺言をした後、それと抵触する生前処分をすれば遺言の抵触部分は撤回される」となっていて、「生前処分」には離婚や離婚などの身分行為も含まれるとされています。

実際に、離縁の場合については判例があります。
注意しなくてはならないのは、単純に離縁や離婚があったという事実のみで遺言の撤回を認めるということではないことです。
離縁や離婚にいたる事情やその後の状況などを考慮に入れて、遺言者の真意(最終意思)がどこにあるかによって判断するという枠組みになっているのです。

今回の離婚の事例でも、離婚して別の相手と再婚しているケースと離婚後も一緒に同じ屋根の下で暮らしているケースは分けて考えるということなのです。

後者の場合、遺言の撤回を認めることは難しいと考えられます。(Aさんの意思に変更があるとすること)

このように具体的な事情により、遺言の効力の違いが出ることになり、同時に当事者の間で争いが生じやすくなります。

無用な争いを避けるためにも、Aさんとしては新たに公正証書遺言を行うなどにより、自分の意思を明確にしておくこと必要があるのです。

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